君がいるから大丈夫

中村文則さんの本と戸塚祥太くんが好きなジャニオタです

Defiled(ネタバレあり)

 

 

東京、大阪、福岡の3都市からなる舞台『Defiled』の東京公演を観劇して来ました。

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舞台「Defiled -ディファイルド-」オフィシャルサイト | 出演キャストやチケット情報など | 2017年4月~5月、東京・大阪・福岡公演

 

初めての自チケ最前で、始まる前は緊張からか腹痛に見舞われたり散々だったんですが(笑)、始まるともうそこにいるのは戸塚祥太でなくハリー・メンデルソンで、私の緊張はいい意味で徒労に終わりました。戸塚くんってやっぱりすごいなあ。

 

 

下手からそっと出て来て、慎重に慎重に爆弾を本棚に並べていくハリー。その姿はBGMと合わさってさながら映画のオープニングシーンのようで、その時のハリーの瞳に、開始早々鳥肌が。唯一音楽が使われた、芸術的なシーン。目の前にあるはずのない題字が見えたような気がしたし、ああ、始まるなと。つい生唾を飲んでしまうような緊張感。

 

その時、目録カードの棚の上に足をかけるハリーが靴を脱いでそっと足を掛けていて、彼にとっていかに大切なものなのかをそれとなく理解できたような気が…。加えて終盤にハリーが混乱し始めたシーンでは靴のまま飛び乗っていて、それにも心が痛みました。

 

 

私は今回、「ハリーが守りたかったものとは一体何だったのか」を自分なりの表題にしていました。彼は目録カードを守ることで、一体何を伝えようと、何を守ろうとしていたのか。それをこの公演から感じ取ることを、自分なりの課題として勝手に設定していました。

 

結果から言ってしまうと、ハリーの守りたいものは舞台の中で明確には明かされないし、目録カードのみだとハリーも断言しています。それで間違いないのだと私も思いますが、5/2の公演で私が見たものを私の脳みそで噛み砕くと、ハリーにとって図書館が、目録カードが、彼のプライドだったのではないかと感じています。

 

加えて、そのプライドの礎である恋人や図書館に対して、絶大なエゴイズムを発揮しているハリーが愛しかったです。自分の思いのままにならないと激昂して、でも誰かのことを傷つけたいと思っているわけではなくて、自分が守りたいものをただただ守りたいだけなのに結果として傷つけることになってしまうハリーの葛藤が愛しくて悲しくて。そしてそれを理解しようとしているのに全く出来ないブライアンもまた、悲痛な美しさに溢れていました。

 

ブライアンのことを決して撃たなかったハリーと、いくらでも銃を取り返すタイミングはあったのに取り返さず撃たなかったブライアン。友情と言うにはあまりに歪なそれが悲しくて仕方なかったです。

 

ハリーのやろうとしていることは、ブライアンだけでなく私にも理解し得ないし、ハリーを演じている戸塚くん自身も理解に苦しむと様々なメディアで言っていました。「どうしてそこまで?」と思ってしまうほどの執着が目録カードにあります。しかし、分からなくもない、ともまた思ってしまうのも事実で。

 

ハリーの場合はそれが突発的かつ自己中心的な形になってしまったわけですが、そのような「絶対に譲れないもの」は多くの人にあるもので。じゃあ「いっそ破壊してしまおう」と思うほど、情熱に溢れたものを全員が持っているのかと問われたら、それを持つ人は少ないと思いますが…。

勝村さんのパンフレットでの発言をお借りするなら、ハリーは非常にインローな人間なのではないか、と思いました。行動はさておき。

 

ラストシーンで、狙撃された後に震える手で自作の爆弾のスイッチを押して、しかし不発に終わり何度も何度もスイッチを押した時の「なにがテクノロジーだ……」という台詞はテクノロジーの進歩(OPAC機能)を否定し続けたハリーの姿が浮き彫りになっていて、心にずっしりと落ちて来ました。

進歩、って、便利、ってなんなんでしょうか。

不便なものにもそれが普及した理由があって、でも便利なものに変わってしまって。理解したつもりになっていたそれを目の前に提示されてしまうと、口をつぐむほかなくなってしまいます。加えてその台詞の後、冒頭でも落ちた場所の爆弾が静かに落ち、その爆発で燃え上がる図書館。ハリーの意思とは無関係に炎上する図書館の中で、茫然自失のハリーは脳裏に焼き付いて離れません。

次第に暗くなる図書館の中で、ぽつんと光に当てられたハリーは数分間一度も瞬きをせずただ虚空を見つめていました。

 

最期の姿に、ハリーの殉死が果たして正解だったのか、答えが一瞬で見つからなくなりました。きっとあの時ハリーが笑っていれば、私の中でこの結末はある種のハッピーエンドとして完結したのだと思います。

 

 

ハリーの求めた終焉は、一体何だったのでしょうか。聞く機会は、生涯ないけれど。